ご挨拶
2年前の2014年1月の「ご挨拶」で、東京オリンピック開催について言及した。2020年の東京オリンピックの開催予算は7,340億円と言われているが、お役所仕事で予算どおりにできたためしがないと。そして2015年12月、まだ本格的な工事が行われていない状態で恐れていたとおりになってきた。国立競技場の件は、たまたま表だったからまだしも、隠れたところで予算が水増しされ、2015年12月19日の産経新聞の発表では、その開催予算が約3倍の2兆円程度に膨らむ懸念があることがあきらかにされた。
1964年の東京オリンピックでは、オリンピック終了後の10年間(1964年~1974年)で総人口が1,300万人も増えたのである。オリンピック総経費は、1兆400億円だった。社会資本を充実し、民族精神を高揚させて、高度経済社会へ相転移するための「播種」としては、東京オリンピックは、ある種の「神風」だった。
翻ってみて、2020年に開催される東京オリンピックでは、オリンピック終了後の10年間(2020年~2030年)で、総人口が860万人も減少する、と予測されている。いわゆる「少子・高齢化社会」が本格化するときである。2020年に開催される東京オリンピックの総経費は、おそらく数兆円規模で、まだまだ膨らむであろう。
願わくは2020年東京オリンピックがインバウンド経済の起爆剤として機能し、我が国が、イタリアやスペインのように5,000万人~7,000万人ちかくの観光客が訪れる国に、様変わりして欲しいものである。司馬遼太郎は、20世紀の日本人を「この国のかたち」で書き記した。2020年の東京オリンピックが21世紀の日本人を書き記す始まりであって欲しい。
2016年 1月 吉日
吉田篤生会計事務所
所長 吉田 篤生