ご挨拶
高齢化社会と多様化社会は同じベクトル上にあるという。なぜなら、“人間の若さは一般に社会を均質化し集団化させる条件であるが、老いの経験は、ただそれだけで、すでに個人の運命を多様化し、個別化する方向に働くからである”と山崎正和は、彼の著書「柔らかい個人主義の誕生」で述べている。20歳の青年は、誰しも同じように性的に成熟し、体力の点で生涯の頂点にあり、配偶者の獲得と生計の自立を目指すという共通の課題を抱えているが、老年が抱える課題は一人一人異なり、60歳で衰弱の域に入る人間もいれば、80歳で矍鑠(かくしゃく)と活躍している人物もいる。
20世紀末、組織に全面的に依存していた個人のアイデンティティが落ち着く先を求め、さまよい始めて、はや10有余年。人間とは“その人が持っている関係の総和である”と内山節は、哲学した。2011年は“関係の総和”を今一度、問い直し、見つめ直していく年にしたいものである。
引用文献:「柔らかい個人主義の誕生」山崎正和著/中公文庫
2011年 1月 吉日
吉田篤生会計事務所
所長 吉田篤生