YOSHIDA ATSUO ACCOUNTING OFFICE

YOSHIDA ATSUO ACCOUNTING OFFICE

コラム

知識について語ってみよう。

 「第五世代マネージメント」を著したチャールズ・M・サベージは、知識を5W1Hに分類し、以下のように定義しています。
(1)知識とは<Know How>であり、その仕事を効率よくするためには、どう処理していけばいいかを知ること。
(2)知識とは<Know What>であり、その仕事を効率よくするためには、何を用意して、何を参考にして、何を実行していけばいいかを知ること。
(3)知識とは<Know When>であり、その仕事を効率よくするためには、どのタイミングで、どのような手順ですればいいか。段取りをつけるタイミングを知ること。
(4)知識とは<Know Who>であり、その仕事を効率よくするためには、誰に頼めばいいか、誰に相談すればいいかを知ること。
(5)知識とは<Know Where>であり、その仕事を効率よくするためには、かつて、その仕事がどのようなカタチで、どこで発生したかを知ること。
(6)知識とは<Know Why>であり、その仕事を効率よくするためには、その仕事がなぜ発生したか、その背景や狙いを知ること。

 そして今日、チャールズ・M・サベージが定義した「知識の5W1H」は、さらに複雑化し、「知識の報酬や、知識の量」を規定するための定義が新たに必要になってきました。知識が社会の基軸価値となったのだから、当たり前と追えば当たり前のことです。以下に追加してみます。

(7)知識とは<How Much>として、その知識はいくらの価値を持つものか、その価値を定量化しなければならない。
(8)知識とは<How Many>として、その知識はどれくらいの量があるのか、その量を定量化しなければならない。
新しくつけ加えられた<How Much>と<How Many>が、じつは知識社会で働くうえにおいて、報酬を規定する目安になるのです。

 知識社会では、少なくとも“時間給”や“月給”という報酬制度はそぐわなくなりつつあります。例えば、Aさんは、Aさんに与えられた仕事を1時間で終えました。Bさんは、Bさんに与えられた仕事を10分で終えました。AさんとBさんは同一の仕事(時間給1,000円と決められた仕事)を与えられたにもかかわらず、Aさんは1時間、Bさんは10分で終えてしまったのでした。

 職種によって時間給が異なるのは当然なのですが、同一の職種において仕事を終えるスピードが異なり、なおかつ仕事の品質(出来具合)も異なるケースが発生するのです。知識社会では、仕事の報酬を従来の時間給で算出することが難しくなります。少なくとも知識は第三者に評価されるべきものであり、日々の業務のすべてを詳細に、正確に記述し、蓄積し、整理し、定量化し、価値基準値を明確にし、いつでも検索できるカタチ、つまり共有できるカタチにすることが不可欠になってきているのです。

 私の会計事務所と契約しているコンサルタントの話ですが、彼の仕事の速さは尋常ではありません。どのような仕事を依頼しても、たちまちのうちに仕上げてきます。普通の人が1週間はかかるだろうという仕事も、早ければ翌日、遅くても2、3日で持ってきます。

 その彼が、先日ぼやいていました。「仕事が速いと言うことは、必ずしもいいことばかりではない。むしろ時間をかけて仕上げたという印象を与えた方が有り難みがあるようで、高い評価得ることがある」とぼやいていました。知識を定量化する。知識を可視化する、可値化することは、これからの社会ではとても重要な課題になることは間違いありません。

 知識は目に見えるカタチとしての形式知、目に見えないカタチとしての暗黙知として区分されると同時に、“知識給”という新しい報酬制度の創設が不可欠になってきています。