YOSHIDA ATSUO ACCOUNTING OFFICE

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コラム

信じていたモノが崩壊していく現実

 1983年10月、日本の総理大臣としてはじめて田中角栄が懲役4年・追徴金5億円の有罪判決を受けた。その頃からなにやら権威というものが失墜していったような気がします。「天地神明に誓ってそのようなことはない」とマスコミ向けの嘘を言い続ける政治家たちをテレビで観ることが少しも珍しいことではなくなってしまった。警察官の不祥事、銀行員の不祥事・・・etc

 あの会社は、あの人は、そんなことはするまいという不文律が一挙に崩れてしまった。道徳的な規範とすべき指標が無くなってしまったのが、今のわが国の現状です。 そして同時に、終身雇用制度、年功賃金制度はあっけなく崩壊し、滅私奉公、国のため、会社のために、という大原則が崩壊し、さらに国民年金、厚生年金、企業年金などの崩壊の兆しが見え始めた。老後の安定が見えなくなってしまったのです。一生懸命、まじめに勤めれば老後は安心。寄らば大樹の陰という暗黙の了解が崩壊しつつあります。

 社会の何が変わったのか。時代の何が変わったのか。じつは何も変わっていないという説があります。「昔も今も、そのような不祥事や問題点は山積みしていたが、不祥事の発覚や問題点の指摘が顕在化しなかっただけ。表沙汰にならなかっただけで情報の粉飾や隠蔽が上手く行われていたのにすぎない」という説です。

 情報の発信源が明確に特定できる時代においては、情報コントロールは権力や権威の側で自由に操作できる特権でした。「ここは一つ内聞に」というお願いと、「おまえの人生がどうなってもいいのだな」という脅しのバランスがとれていた時代でした。

 インターネットの発明と普及が、すべての事実をあからさまにしてしまうようになったのです。誰もが手軽に簡単に情報の発信者になり得て、しかもその情報の発信源の特定が難しいという道具を手にした瞬間に、一人一人の個人が情報発信者となり内部告発の類が多発したのでした。もちろん、情報の発信源の特定が難しい匿名情報は、大部分が偽りの情報として世の中に氾濫します。事実、インターネットの掲示板などで飛び交う噂は、読むに耐えない情報のるつぼといえます。しかし、「火のないところに煙は立たない」の喩えの通り、真実も飛び交っているのです。

 何が真実で、何が虚実なのか。専門家、もしくは評論家と称する人たちのほとんどの意見は、後追い意見です。モノゴトが発生した後で、その現象を説明しているにすぎません。マスメディアは視聴率こそが真実であるとして、衆愚政治のお先棒を担いでいる、と言ってもいいかもしれません。

 いま、この時代において必要なことは、インターネットが発信する大量の情報に惑わされることなく、マスメディアが報道する情報に揺らぐことなく、自らを信じることが、現状を打破していく第一歩の始まりとして必要な時代のようです。