YOSHIDA ATSUO ACCOUNTING OFFICE

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ご挨拶

 2016年11月25日、いわゆる「年金カット法案」と言われる『国民年金法等改定案』が衆院厚生労働委員会にて強行採決された。そもそも年金制度設立の歴史を紐解いてみれば、年金制度は持続可能な制度としてつくられようとしていたのではなく、もともとあった恩給制度の上につくられたいびつな戦後補償の歴史が垣間見えてくる。
 軍人恩給、共済年金、厚生年金と、この3つの年金制度設立の裏には意図的な政治力の行使があったのがわかるだろうか。軍人恩給は軍人と公務員とその遺族たちが結集して政治家を動かした。共済年金は現役の公務員が結集して政治家を動かした。厚生年金はサラリーマンが組合を結成して政治家を動かした。では、国民年金は・・・。
 少なくとも国民年金を享受する人たちには、結集して政治家を動かしてきた歴史はない。各種年金制度を立法化・行政化してきたのは、戦後の高度成長期を生き抜いてきた団塊世代であるといえる。各種年金制度が成立してから60有余年。年金の世代間格差は知らぬまに進行し、厚生年金でみてみれば70歳になる世代は負担した保険料の5.2倍の年金が受け取れる見込みに対して、30歳になる世代以降では2.3倍にとどまっている。まがりなりにも政治に参加してきた団塊世代と無関心を装ってきた若者世代の差が、若者から高齢者が搾取する構造で公的年金崩壊への道を歩むようになったのではないだろうか。
 衆愚政治と言われようが、民主主義の原則は、「多数者」が権力者なのである。政治に失望するのも政治家を馬鹿にするのも結構ではあるが、私たちは、いまいちど政治と真摯に向き合っていく、という新たな決意を必要とする時代にさしかかっているのではないだろうか。

2017年 1月 吉日

吉田篤生会計事務所
所長 吉田 篤生